建物の清掃を外部に委託する際、「定期清掃」と「日常清掃」という言葉をよく目にするものの、その違いがあいまいなまま契約を進めてしまうケースは少なくありません。どちらも清掃であることには変わりありませんが、実は目的も作業内容も大きく異なります。この違いをきちんと理解せずに導入してしまうと、「思っていた作業が含まれていなかった」「費用ばかりがかさんで成果が感じられない」といったすれ違いが生じることもあります。特に、商業施設やマンション、オフィスなどでは、清掃品質が日常的な印象や衛生状態に直結するため、後戻りのきかない問題になりがちです。清掃は、単なる「きれいにする作業」ではなく、環境の維持や資産の保護、利用者への信頼感に関わる業務です。だからこそ、それぞれの清掃の特性と使いどころを理解し、現場に合った適切な選択を行うことが、長期的な建物管理の第一歩になります。
作業内容・頻度・目的が違う。まずは「定義」を正しく理解しよう
「日常清掃」とは、文字どおり日々行われる清掃業務のことを指し、頻度は毎日もしくは週数回など、比較的こまめに行われるのが一般的です。掃除機がけやモップ掛け、ゴミ回収、トイレ掃除など、目に見える汚れや使用頻度の高い場所を中心に、衛生状態や美観を維持するために行われます。これに対し「定期清掃」は、月に1回や3か月に1回といったスパンで実施される、やや専門性の高い清掃です。床面の機械洗浄やワックスがけ、高所の窓ガラス洗浄、カーペットの洗浄など、普段の清掃では手が届かない部分を重点的に清掃することを目的としています。日常清掃が「表面のきれいさを保つ」のに対し、定期清掃は「見えにくい汚れをリセットする」といった違いがあり、それぞれが補完関係にあります。どちらか一方で済ませようとすると、日々の清潔感や建物全体の劣化防止において不足が生じることもあるため、両方をバランスよく組み合わせることが重要です。
求める効果が違う。清掃の目的から見た2つの役割の違い
日常清掃と定期清掃は、単に「どの作業を、どの頻度で行うか」の違いだけではありません。そもそもの目的や果たす役割が異なるため、導入にあたってはその点を踏まえる必要があります。日常清掃の主な目的は、日々の衛生状態を維持し、来訪者や利用者にとって快適な環境を保つことです。たとえば、オフィスビルでは毎日のごみ収集やトイレ清掃が基本であり、これらがなければ不快感や苦情につながります。一方で定期清掃は、建物や設備の劣化を防ぎ、長期的に良好な状態を保つことが目的です。床材のワックス塗布やエアコンの分解洗浄などは、見た目だけでなく、建材の寿命や機能性に直結します。つまり、日常清掃は「今この瞬間の清潔感」を保つもの、定期清掃は「将来の劣化リスクに備える」ための施策といえるでしょう。どちらが欠けても、建物の総合的な管理には不十分です。施設の種類や利用者数に応じて、役割を正しく把握し、必要な清掃計画を立てることが求められます。
日常清掃と定期清掃、費用と契約の考え方も異なる
清掃業務を外注する際、多くの方がまず気にするのは費用面でしょう。ただし、日常清掃と定期清掃では、料金の算出方法や契約の考え方が異なるため、単純な金額の比較だけでは実態がつかめません。日常清掃は「人を派遣する」サービスであるため、人件費が中心になります。作業時間や曜日、清掃箇所の範囲によって料金が変わり、月額契約で毎月固定費が発生するケースが一般的です。一方、定期清掃は「機械や特殊な資機材を用いた専門清掃」が主となるため、1回ごとのスポット料金が発生しやすく、施工範囲や必要な技術レベルによって費用に差が出ます。見積書を見る際には、「どこまでが日常清掃の範囲か」「定期清掃の作業頻度はどのくらいか」を明確にしたうえで、両者を合わせた年間コストで検討することが重要です。また、契約形態も注意が必要です。日常清掃は常駐スタッフによる運用か、巡回型かで対応力が変わり、定期清掃はスポット依頼か年間スケジュール型かでコスト効率が左右されます。こうした違いを理解したうえで、現場の実情にあった清掃契約を選ぶことが、結果的にコストパフォーマンスを高めることにつながります。
併用が前提。現場の実情に合った清掃計画を立てるには
清掃業務の導入において、「日常清掃か定期清掃か、どちらを選べばよいか」と問われることがありますが、実際にはどちらか一方に絞るのではなく、両方を適切に組み合わせることが前提となります。たとえば、マンションの共用部では毎日のごみ収集やエントランスの床拭きは欠かせませんが、月1回のワックスがけや年1回の外壁清掃も、美観維持や資産保全の観点で必要です。オフィスでは、日々の机周りやトイレ清掃に加え、定期的なカーペット洗浄や空調設備の点検清掃も求められる場面があります。こうした現場ごとのニーズに応じて、清掃計画を柔軟に設計する必要があります。その際には、建物の利用頻度、汚れやすい箇所、人の出入りの多さ、管理体制など、複数の要素を総合的に判断することが大切です。また、清掃会社に依頼する際は、「どこまでやってもらえるのか」「何をこちらで準備すべきか」をあらかじめ丁寧に確認し、曖昧な点を残さないようにしておきましょう。業務内容のすり合わせや、実施後のフィードバック体制がしっかりしている会社であれば、継続的な改善も見込めます。清掃は導入して終わりではなく、環境に合わせて育てていくもの。清掃計画に迷ったときは、現場目線を持つ清掃会社にまず相談してみるのもひとつの選択肢です。
https://www.tri-ace-inc.jp/recruit
「違い」を知ることが、最適な衛生管理の第一歩
定期清掃と日常清掃の違いを正しく理解することで、建物にとって必要な清掃の「組み合わせ」が見えてきます。それぞれの役割は、表面的なきれいさと、建物の寿命や資産価値の維持という異なる面をカバーしており、どちらが欠けても最適な環境づくりは実現できません。清掃を「経費」としてではなく、「長期的な価値を守るための投資」として捉えることで、日々の環境管理に対する考え方も変わってくるはずです。これから清掃の見直しや委託を検討される方にとって、本記事がその第一歩となれば幸いです。
